Teclast F5 レビュー:本機右側面に潜む4つの謎

忙しい人の為の結論

USB Micro-Bコネクタ情報まとめ
  • 標準添付のケーブル経由で、USB2.0フル規格の速度・電圧に準拠したデバイスが使用できる。
    (つまりこのUSB Micro-BコネクタはUSB標準仕様には非準拠)
  • 標準添付のMicro-B To Type-AケーブルはMicro-B OTG(USBホスト)ケーブルではない
  • このMicro-Bアダプタは予備が欲しくても入手方法が不明(最悪自作?)
USB Type-Cコネクタ情報まとめ
  • 標準電源からType-C PDへの給電量は実測で12.4V/1.5A前後の模様。
  • 本機のUSB Type-C コネクタはPD1.0以上の仕様準拠の可能性が高い。
  • 他PCとの共用前提でPD対応電源アダプタを購入する場合、15V/1~3A(15~45W)のPDOを持った45W級がおススメ
  • 本機のUSB Type-C コネクタはAlternate Modeに対応しておりHDMI出力が可能。

本体起動と主要操作

本機右側面には合計4つの謎があります。
解説しながら検証をしていきましょう。

謎その1、USB Micro-B端子の通信速度と供給電力の謎

このPCの右側面にはUSB Micro-B端子があります。

F5自体にもMicro-B OTG[USBホスト]と思われるケーブルがついているのでここにはアダプタ経由でType-Aコネクタの機器が接続できると思います。
Micro-BはUSB 3.xになるとコネクタ形状が変わるため、仕様上の通信速度、給電能力はUSB 2.0規格準拠で間違いないでしょう。

ここで出てくるのが通信速度。

USB2.0でOTGケーブルを使用すると、仕様上の最大速度はHigh Speed(480MBps)をサポートしなくなります。
つまり、最悪の場合USB 1.1並みの12Mbps前後でもOKという事になります。

本機を持ち出してUSBメモリ等を使用する場合、この速度差ははかなり大きな差となってしまいます。
実効速度はどのくらいになるのでしょうか?

順に確認していきたいと思います。
まず手始めに各種USBデバイスをつないでみました。



マウス・キーボード・USBメモリともアダプタ経由で普通に動作しました。
とりあえず、MicroUSB Type-Bですがケーブル経由でホスト側として接続できることは間違いないようです。


というわけでホスト側という事であればデータの転送速度も試しましょう。

データ転送のテストに使用したファイルはDebian-9.5.0-amd64-xfce-CD-1.iso(655.360KB)
USB3.0対応のUSBメモリへのデータ転送で5回テストを行いました。

結果は下記の通り。

測定結果
1m44s12
1m40s97
1m40s96
1m40s98
1m40s96

どうやらUSB2.0 High Speed(480MBps)は出せているようです。

さらに、MicroUSBの供給状況(USB充電可否、供給電力量)を下記テスタで確認してみました。

COOWOO USB電流電圧テスター
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01J74UUD6/


こんな感じで計測しました。



写真を見てもらえばわかる通り、ほぼ5V/0.5A超出ています。
今回はスマホを充電することに使用してみましたが問題ありませんでした。

はてさて、このケーブル、本当にOTGケーブルなのでしょうか?
今のところ端子側の結線も試していませんから、ケーブル側だけ独自仕様という可能性も全くゼロではありませんが。
それでも、これはOTGケーブルではなく、独自ケーブルの可能性がかなり高くなってきましたね。

こういう胡散臭い部位は中華PCの醍醐味ですね。わくわくしてきます。

謎その2、USB Micro-B 端子経由での充電ってどうなの?の謎

同じく、第2の謎もUSB Micro-Bコネクタに関するものです。

F5のUSB拡張コネクタはMicro-B端子であり、Micro-B端子であるならここから本体充電ができないとおかしい、というものです。

細かく説明します。
USBの仕様上、本体[親機]->USB-Aコネクタ(オスメス)->ケーブル->USB-Bコネクタ(オスメス)->デバイス[子機]が正しい接続スタイルです。
これはMicro端子の場合でも基本は同じです。親機側がAコネクタ、子機側がBコネクタとなります。
つまり、仕様通りだとUSBホストとUSBクライアントの機能を併せ持つには、Bコネクタの他に、もう一つAコネクタの口が必要になります。
当然ですが、子機(B)側は親機(A)側からの電力を使って充電することができます。

しかし、スマホなど本体が小さな機種では1つのデバイス上でUSBのホストとクライアントを切り替える為だけに複数コネクタを付けるのは無駄です。

そこでUSBホスト機能を持つMicro-B端子持ちデバイス(スマホ等)でマウス等のUSBクライアントを利用できるようコネクタの仕様を拡張するのがOTGケーブルです。

(サンワサプライ様にあったわかりやすい画像を引用します)

OTG対応デバイスではMicro-B端子にOTGケーブルが刺さった場合、自動的にそれを感知しホストとしての処理ができるようケーブルへの通信・通電端子を切り替えます
こうすることでUSB仕様に違反しないまま、B端子でありながらA端子としても動作できる、という仕組みをつくっているわけです。

逆に言うと、Micro-B端子でOTG(USBホスト)ケーブルが動作するなら、当然AOA(USBクライアント/通常のUSB)ケーブルも刺さります。
そしてAOAケーブルが刺さる、イコール、充電が可能という結論になってしまうのです。


いや、もちろん、私もあり得ないと信じてますよ。
さすがに充電テストとかとても怖くて試せません。
USB規格非対応のB端子に通電状態のAOAケーブルB側刺したら基盤破壊は確実ですから。

でも、どうなんでしょうか?

というわけで、さっそくテストのためMicro-B OTGケーブルを刺してみました。

使用したのは、ありもののサンワサプライ AD-USB18 USBホストアダプタです。

OTGケーブルの先に付属アダプタで認識していたUSBマウスをつけてみました。
OTGアダプタ側も既存別機種で使用していたものなので、アダプタ自体の不良ではないのも確認済みです。

しかし、まったくうんともすんとも言いません。
やはり、OTGケーブルではダメなようです。
つまり、付属のアダプタケーブルは通常のOTGケーブルではないという事で確定です。

という事は当然、このMicro-B端子の形をしている端子もUSBに非準拠なコネクタであるという事になります。
つまりは、このコネクタ経由での充電は不可能、という結論でいいのではないでしょうか。

前項目で計測した給電状況やUSBの認識状況、通信速度などを考えると、一定のルールでUSB2.0のType-A端子の出力をそのまま割り付けたのではないかと思います。

でも本来USBのMicro-A端子を使えば仕様違反はなかったはずです。
なぜそんなことをしたのでしょうか。

この謎は、恐らくですが、Micro-Bコネクタの出荷量が原因でしょう。
Micro-Bコネクタは全世界のスマホ用の電源端子として使用されています。
そのため、使用機器の数を考えるとMicro-Aコネクタとは数段階で出荷量が違うのではないでしょうか。
当然、出荷量が多ければ部品単価は下がります。
Micro-Bコネクタの仕入れ価格がMicro-Aより圧倒的に安く、それで流用せざるを得なかったとかじゃないかと推測できます。
以上、証明終了です。

でも、この問題、個人的にはテストする前に判別出来てよかったです。
これのテスト、本気で怖かったですからねえ。買ってすぐ周辺基盤ごと吹っ飛ばしたくはないですもん。

ただ、独自規格モノなので互換アダプタの調達方法が問題になりそうなのは間違いないんですよね。

断線などを含めて考えると、やっぱり予備が欲しいですからねえ。
少し待ってからAli当たりを探し回るしかないかもしれないですね。

謎その3、USB Type-C Power Delivery(PD)規格バージョンと対応PDO編

いまさらですがTeclast F5はUSB PDによる充電に対応しています。

このUSB PDは規格上、充電器側の供給電力(ワット:W)量と規格指定の電圧(ボルト:V)に対し、対応する電流(アンペア:A)の組み合わせで電力を提供する(この組み合わせをPDOという)というのが基本的な仕様です。

USB 2.0/3.0の規格上で指定されている電圧は5V/9V/15V/20Vの4種類で、ワット数をボルト数で割った結果が基本的なアンペア数になります。
ただし低消費電力機種に計算そのままの大きなアンペア数の電流を流すのは無駄かつ危険です。
そこで、総ワット数が60W以下の場合アンペア数の上限を3A、それを越える場合上限を5AとするというのがPDの給電についての大まかな仕組みになります。
(仕様内には給電開始までの通信仕様とか、ケーブル判別の為の仕様とか細かいことも含まれますが、普通に使う分には大まかに上記と理解していいと思います。)

そういうわけで、安全で高速な充電を実現するには、本体側が対応している範囲で一番高い電圧・電流の組をPDOとして持つ電源が必要になります。
さらに言うと、充電器はできるだけ1つで複数のものに対応できる方が携帯品の数を減らせて良い、という事になります。

ところが、実はF5が対応するPODについて、本機付属のマニュアル・本機自体・付属バッテリーいずれにもサポート範囲の情報がありません。
付属の電源コネクタに記載の電源情報も12V/2A[24W]のみとPD 2/3に存在しない規格の有様です。
いきなりType-Cフル対応(Full-Featured)の文字がピコン・ピコンと点滅を始めてしまう事態ですが、どういう事でしょうか?

実は、良く調べると実はPD 1.0時代、12Vの設定は規格内に存在していました。
PD 1.0時代は上記4つの電圧ではなく、5V/12V/20Vの3種類が基本電圧でした。
その後PD 2.0に規格が上がった際に12Vの規格が現在の8Vと15Vに分割され、今の4種類に別れた模様です。

で、今回の電源ですが、PD1.0では総ワット数が24Wで12Vの場合、3A以内の電力供給を受付られればよいので「本体側としては」仕様クリアとなります。
おお、確かに「本体は」Type-Cフル対応(Full-Featured)、広告に偽りなし。安心しました。

(いや、5V/2A系の出力が無かったりと、電源コネクタ側は完全に仕様NGですけど。
というか、この電源、PDで受け入れる電圧・電流があっているだけでVbus Hot系統かつSource_Capabilitiesメッセージとかも吐いてない電源の気がするんですが。
もしかして、本体側もCold Socketなしで無制限に受け入れたりする仕様だったりしませんよね?ちょっといろいろと大丈夫なのかものすごく気になるんですが。)

閑話休題。
同梱品の情報だけからの推測の段階でいきなりかなりのグダグダ具合です。
しかし、実際のとこ、現物ではどうなのか、という点が一番の問題になります。
気を取り直して実PCでの消費量がどうなのかを調べてみたいと思います。
まずは標準の電源コネクタからType-Cアダプタへの給電電圧・電流を下記のテスタで確認してみました。

ミヨシ MCO USB Type-C専用USB電流テスター STE-02/BK
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01J3CB77U/

例によって、こんな感じで計測してます。


計測した結果は写真の通り、標準電源使用状態で通常時12.4V/0.6A(7.44W)~ベンチマーク中でも12.3/1.74A(21.4W)前後でした。

問題なくPD1.0仕様内での電源状態ですね。
この電力量だと5V/3A(15W)ではフル動作中での充電は難しく、電力消費がかなり低い状態でないとほとんど充電できない計算でしょうか。
ただ、計測上は1Aを割っていることも少なくない様子ですので、「サポートされていれば」5V/3A(15W)でも動作中充電が不可能ではない、ってとこでしょう。
「サポートされていれば」高性能スマホ用の9V/3A(27W)あたりなら余裕で充電できる感じです。


というところで、引っかかりました。
「サポートされていれば?」

えっ、ちょっと待った。PD1.0準拠なら、9Vのサポートってされていなくないですか?
PD1.0では5V/2A(1~100W)、12V/1.5~5A(11~100W)、20V/3~5A(37~100W)の範囲しか存在しないんです。

さすがに、Type-Cフル対応(Full-Featured)をうたっているので、PD1.0/2.0/3.0全対応で設計されているとは思うんですが、そうすると、5V/9V/12V/15V/20Vの5段階サポートが必要です。
それに、電圧上限に差異がある場合、安全に倒すと低い側の電流量に合わせる必要があります。

つまり、本体側が純粋に1.0のみサポートだと、PC用でPD 2.0/3.0のみ対応のアダプタの場合、仕様が共通で使用できるのは20V系PDOのみになります。

9V、15Vはそもそも1.0規格には存在しないし、5Vは2Aが上限なので、45Wや60Wの場合、3Aを供給しちゃいますので本体側としては受けれないわけです。
低電圧仕様のPCで、もし受け側で20V非対応だったりすると、まったく充電できない可能性さえあることになります。
なにしろ、標準電源コネクタは12V/2Aですから。

まあ、実際には1.0のみ対応でType-Cフル対応(Full-Featured)という文言は大言壮語になっちゃいますので、ここらへんを心配するのは無駄な気もしますが。
それでもやっぱり気になりますよね。中華製品のこういう怪しい部分の細かい仕様整合性。

ただ、現実的な話をすると、互換性の都合上、電源側で12V系列を残しているものがかなり存在します。
1.0規格でも、供給側に12V系電圧が存在さえすれば、受け側も最大5Aまでの受け入れが可能な仕様になると思います。
そのため12V/3Aを供給しているPD 2.0/3.0対応充電器であれば1.0と2.0/3.0の両対応は比較的容易といえるでしょう。

あと、補足的な話ですが60Wを越える大電力のものはどうか、というと、実は60Wを境に20V帯のアンペア数が上限5Aに増えます。
このためではないかと思うのですが、一部PCでは充電非対応となる場合があるようです。
Thinkpad X1やYogaが充電できない大電力充電器の多いこと多い事。本当困りものです。
面倒くさい規格ですよねえ。USB PDって。

話を戻します。
携帯することを考えると充電用機器のダブりはできるだけ減らしたいもの。
ここでは他PCの充電に安全に流用でき、かつ、F5に対する充電速度の速いPD 2.0/3.0 Featuredの充電器を選びたいわけです。
その場合、100%安全にいくなら37~60W範囲のもの(20V/1.85~3AのPDOがあるもの)を購入するのが安パイだろうと判断しました。

具体的には価格重視なら20W系しか充電できないことを覚悟して45W系(20V/2.25A)を狙う。
完全にセーフティを狙うなら60W系で1.0互換PDOもちのもの(20V/3Aと12V/3A両対応)を探す、というあたりと考えたわけです。

もちろん一番いいのは両対応の60W系ですが、同じ会社の類似仕様なら基本、ワット数が多い方が高価です。
安価なものを狙って激安中華系というのもアリですが、当然、仕様の準拠状況が事前にはわかりません。
1個1個は安くても、調べるために複数買ってたら、結局高くつくのは自明です。

というわけで、購入したのが以下のACアダプタです。

Omars USB C PD充電器60W「PSE認証済」ノートパソコン充電器 PD3.0 急速充電対応 折り畳み式ACプラグ付き ACアダプターusbc to cケーブル付き (PD充電器60W1ポート)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07FSMMYS8/

調べてもらうとわかりますが、バリバリのPD規格適合品で、しかも12Vラインもある一番の安パイ品。
これなら、F5自体がどれだけダメな仕様でも、最悪プラグ側が守ってくれる!という安心の品質。
いや、中国製ですけどね。やっぱり。
今どきのこの手の品で中身中国製でないもの、ほとんどないですから。

で、さっそく電流電圧を計ってみるわけです。

んんんんん?
15V系みたいですね。使ってるの。
とりあえず、PD2.0/3.0対応は間違いないことが確認取れました。

しかし、しかし3Aどころか1A枠内、つまり、15V/3A(45W)PDO中で出力の1/3しか使ってません。
ちなみに、これファイナルファンタジーXIVベンチ中の消費電力です。
上の標準添付の電源アダプター使用している時よりワット数が低いんですが・・・。
しかもこれ、同一ベンチ中に差し替えても結果が変わらない、かつ、充電状態が維持されてるんですよね・・・・。
困惑・・・。

ま、よくわからないことはおいておいて。
出た結論だけ書いておくことにしましょう。
他PCと電源アダプタを使いまわす場合15V/1~3A(15~45W)範囲のPDOを持った45W電源が最適。

(というわけで、60W超級の充電器については私の環境ではテストできません。お持ちの方、だれか確認して教えてくださると助かります)

謎その4、USB Type-C Alternate Mode対応状況の謎

USB Type-CにはAlternate Modeという拡張規格があります。

USB Type-Cコネクタに関する拡張データ仕様で、Type-Cコネクタから変換ケーブルを経由してDP[Displayport]やMHL[HDMI]の出力が可能になるというものです。
最後の謎は、F5のUSB Type-CコネクタがこのAlternate Modeに対応しているか、というものです。

F5の場合、本体にMicroHDMIコネクタを備えており、かつ、広告情報等でも記載がありません。

しかし、過去別のPCでも、良く調べてみたら予想もしていなかった機能が未公表なだけで実は動作していた。
内部的に汎用チップを使っていて、その機能の中に含まれており、サポート上の理由で非公表だった、てな事態に何度かあっています。
そのため、可能性があるなら疑う、というのが私のポリシーです。

それに、Alternate ModeからのHDMI出力が可能なら、HDMIとVGAの両方対応のためにケーブルを2本持ち歩くより、両コネクタがあるType-C Hubを携帯する方が便利です。
Type-Cフル対応(Full-Featured)って書いてありますし、可能性はゼロではないでしょう。
上手くいったら今度はトリプルディスプレイ対応の可能性もあるとか、使い道はともかく、なんとも夢のある話です。

というわけで、早速Type-C to HDMI 変換ケーブルを試してみました。

結論から言うと、Alternate Modeにも完全対応していることが確認できました。
F5のType-CコネクタにつないだHDMI変換ケーブルからのHDMI出力は問題なく可能です。

ほらこの通り、Type-Cアダプタを刺したら表示先選択のダイアログが
表示先を切り替えると無事2画面出力に成功しました。
トリプルディスプレイについては、現在MicroHDMIケーブルを所持していないので、週末にでもテストする予定です。
表示できると面白いなあ。Teclast F5の新しい魅力になりそうです。

まあ、出来ても本体の速度的に便利に使える局面が私にはなかなか難しいんですけどね。
今のところ、普通にメインマシンの方でトリプルディスプレイしたほうが便利ですからね。

でも、出来ないよりはできるほうが確実に面白いのは確かです。
だれか、面白い使い方思いついたら教えてください。




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